IT介護の続き。
以下の記事にもあるが、技術職の人だからリテラシーが高いかというとそうでもないのが辛い。
(この記事も序盤はテクハラ、後半はセミナーへの勧誘なので話半分で聞いた方が良さそう)
IT技術者の能力って、ICT機器?を触っている時間と正比例する部分がある。
なのでキャリアの浅い人は基本的なことを知らなかったりする。
自分で何かを出来る段階ではないのに、大きな仕事を雑に振られることもよくある。そういう人に限って自覚がないので無茶苦茶なことを平気で言ったりする。
インフラ技術者の自分に対して「既存踏襲でこのシステムをリプレースしたいからやり方を教えてほしい」とシステムの設計構築担当の人から要求されたことがあり、何をどう説明したらよいかと、大変頭を抱えたことがある。
- システムのことなんて知らないよ~
- それはあなたが考えることでしょう~
- あなた(のチーム)が詳細設計まで落とし込んだんでしょう~
- やり方(構築方針と利用する予定の技術)を教えてえほしいのはこちらの方です~
と思いながらいろいろな人の力を借りて、大変な手間と時間をかけてなぜか)システム担当者に構築したいと思われるシステムを教えて差し上げたことがある。
近年稀にみる信じがたい体験だったが、今となってはよい思い出。
そんなこんなで上記のような対応を改善せずに実行し続けると、有能な人に山盛りタスクがのしかかるという最悪の事態が訪れる。
最終的には典型的なワンオペシステムが出来上がってしまい、以下のような事象が発生してしまう。
0.まともに仕事ができる有能な人が少ないので有能な人が残業しまくりでIT介護を含め大半のオペレーションを回す、もしくはオペレーションも覚束ない状態で日々の業務に追われる。
1.0の結果、脆弱性対応やセキュリティパッチの適用などのチケットが発行されても対応する暇がなくスルー。(その場はスルーできてしまう)
例:BINDのクリティカルな脆弱性対応など、頻度が高く緊急対応が必要なものも華麗に無視する
2.大規模障害時も根本対応できずその場しのぎで誤魔化す。(その場は誤魔化せてしまう)
例:回線の輻輳時に、影響範囲(アナウンス)の調査ができず、WindowsUpdateを無効化して誤魔化す→根本原因は回線のひっ迫なので回線増速以外解決方法はないのだが周囲への調整(説明)をビビッてスルー
3.監査時の指摘や障害の再発など、上記のツケが自分たちに回ってきて強制的に対応しなくてはいけない状態に陥る。
4.そう簡単に対応できないので(リテラシーが低い)声の大きな方々から恫喝系のお叱りをいただく。お叱りはいただけるが解決策はいただけない。
解決策がお金で解決できる場合:
お金で解決できる旨の提案すると稟議はあげてくれない(社内の立場の話かな?)
→稟議を上げてくれた場合は「俺のお陰やぞ。感謝しろ」と恩を着せられる(当然感謝はします)
5.そんなこんなで雑務に追われて仕事が雪だるま式に増殖する。
増殖した仕事量が原因で有能な人は36協定の壁と対峙することになる。
毎月対峙し続けた結果、一部の人間は以下のスキルを身に着けるか、以下の悪事に手を染めるようになる。
●身に着けるスキル
36協定に引っかからない程度、かつ恫喝されない程度に仕事を放置するというスキル
●手を染める悪事
自宅に仕事を持ち帰る、サービス残業するという悪事。
6.5のスキルか悪事を身に着けることのできない有能な人は、負の連鎖に耐えられず心を壊すか、会社を去る。
7.有能な人が抜けた結果、更にオペレーションや各種対応が杜撰になり0に戻る。
ここまで行くと無限ループ。
一時的に倍くらいの人員を投入して根気強く改善を進めるしかない。
規模にもよると思うが、立て直すためには5~10年の期間が必要ではないか。
上記の対応について思う。
この問題の根が深いところは「プロの中の人にもIT要介護認定レベル」の人が存在したりするところ。
お金貰ってやるプロの仕事ができていないことや、できていない人って結構いると思う。
ICTに対して理解の低い組織の体質にも問題はあるとは思うが、同じくらい有能な人間が少ないことも危惧すべきだと思う。
根本対策は人材育成しかないと思う。備忘録として自分が解決できた人材育成の例を以下に挙げる。
- 有能な人(Aさん)が抱えている仕事とは暗黙知がほとんどなので彼らにお願いしてそれらをひとつづつ形式知(ドキュメント化)する
- 形式知を有能とされていない方(Bさん)にマンツーマンでレクチャーし、Bさんが単独で作業できる状態まで引き継ぐ
- AさんしかできなかったことをできるようになったことでBさんに仕事に対する自信と責任が芽生え、仕事が楽しくなる(経験上ほとんどの場合で、この状態になった)
- Aさんには1の仕事を繰り返してもらい、形式知を他の有能とされていない方(Cさん、Dさん、Eさん)にどんどん引き継ぐ
- Aさんの手元に作業がなくなった時点でAさんをリーダーとしてBさん達に引き継いだ仕事をローテーションさせる
上記のフローを3か月~半年周期で行うことで1~2年程度でAさんの持っていた暗黙知が形式知としてチーム全体で共有される
1の手順が非常に難しいのだが、このフローを2回転させることができれば運用はかなり安定する。
一度知識が共有されると1人、2人脱落者が出ても運用がヒビが入りにくくなり、ジョブローテーション時に作業者と確認者が自動でできるため、その後の業務も2人体制で作業するようになり、ダブルチェック化によるエラーの低減と情報共有までできてしまう。まさに一石二鳥。
過去にこの対応で運用を安定させたことが何度もあるし、運用が安定するとナレッジは手元に残り残業も解消される。残業が解消されるとQOLが向上し離職率も下がる。
作業可能者が複数存在することで組織が強くなり主力メンバーの離脱時のダメージを軽減できる。
離職率の高い職場だと採用コスト(一人当たり採用者の年収分と聞いたことがある)も馬鹿にならないため、コストが安くつく。
上記と併せて大切なことがある。
それは技術者、管理者、採用担当者、経営者など組織の登場人物全員が学び続けることだと思う。
技術職に限らずビジネスパーソンにとって、トラブル発生時に最速で原因を特定し解決策を提案できる知識力と、実行の可否を判断する業務処理能力は必須だと思う。
もう少し言うなら、職務を遂行するときに発生するであろう問題やトラブルを最小限にできるよう事前に対策を打つことがビジネスパーソンの必須の仕事だと思う。
いざという時にあたふたしないようにあらかじめ準備を進めておく必要がある。
その「準備」の源泉は知識だと考えている。知識を得るためには学習という自己研鑽しかないと思う。
仕事を行うにあたり、人の能力不足を責めてはいけないとは思うが、標準的な仕事は規定した方がよいし、その水準に達していない人は一層自己研鑽をするべきだと思う。
最近何の話をしても、最終的には学習と研鑽の話をしている。
つまらない内容だが、銀の弾は存在しない。
生きている限り努力を止めることはできないのだなと強く思う。
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