短くも濃厚な内容だった。最後まで楽しく読めた。
エロゲーであえぎ声を書く(創造する)バイトがあること、その仕事の難しさと奥の深さ。
仕事の難しさに頭を悩ませていた作者の前に颯爽と出現する先輩の神エクセル。
神エクセルを発見してから劇的に好転する筆者の環境。
「あえぎ声を書く」という業務を極めた先輩が、後輩のためにあえて残した神エクセル。
些細な行為から、先輩の奥ゆかしい優しさ、懐の深さが凝縮されていて涙が出そうになった。
こんなノウハウを惜しげもなく提供する先輩の懐の深さに感嘆を禁じ得ない。
以下抜粋
「あえぎエディタ.xls」と題されたエクセルファイルは、
前任者が残したあえぎ声専用のマクロであった。
縦に並んだセルにセリフを一つずつ入力していくと、
各セリフに含まれる母音・子音等の音声的要素が自動で数値化される。
さらに、その数値を足し引き計算することで、
「絶頂度」と呼ばれる値が算出される仕組みになっていた。
この「絶頂度」がミソで、この値がシーンの最初から最後に向かって
少しずつ上昇していくように文章を組み上げていくと、
理想的なあえぎ声が出来上がるのである。
かくのごとき驚くべき神エクセルを、前任者は独力で作り上げたようだった。
そして、秘密のツールとして上司には隠しつつ、
後任である私にこうしてこっそり教えてくれようとしたのだろう。
このツールのおかげで、私の仕事はずいぶん楽になり、
安定したクオリティであえぎ声を出し続けられるようになった。
それはそうとして、途中までは真面目に読めたのに以下のくだりは声を出して笑ってしまった。
夏目漱石とか芥川龍之介とかが好きなんだな。この人。文学部だと嬉しい。
以下抜粋
あえぎ声以外のテキストでも、その「絶頂度」を算出できるのだ。
そこで私は、試みに文学史上の名作の「絶頂度」を出してみた。
たとえば、「私はその人を常に先生と呼んでいた。」は12、
「親譲りの無鉄砲で小供の時から損ばかりしている。」は30という具合だ。
予想もしていなかったことだが、こうして調べていくと、傑作の多くは私の仕事と同じ原則で書かれていることがわかった。
つまり、最後に向かうほど「絶頂度」が高まっていくのである。
とくに顕著なのは芥川で、「下人の行方は、誰も知らない。」など絶頂度367だ。
薬漬けになった人妻が白目を剥いて失神するシーンでもせいぜい330程度なので、
どれほど驚異的な数字かお分かりいただけるだろう。
「絶頂度」はあらゆる文章に通用する普遍的な法則だったのである。
しつこいようだが、先輩神エクセルは素晴らしい。
文学の普遍的な法則まで明らかにしてしまうほどのツールなのだから。
まさしく神作品。神の領域。
アルゴリズムを拝見するために、是非ともソースコードを読ませてほしい。
GitHubに公開してほしい。
ソースの公開が憚られるならば、Webサービスとしてインターネット上に提供してほしい。
繰り返して褒めるが短くも内容が詰まった素晴らしい作品だった。
こんないい話なら事実でもフィクションでも構わないのでいくらでも聞きたい。
もしも先輩がIT技術者ならば、現在どのような作品を作り上げているのか教えてほしいし、仕事ぶりを世に知らしめてほしい。
最後に
(´-`).。oO(この文章の絶頂度と神エクセルが提案するあえぎ声を教えてほしいなあ)
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